東京家庭裁判所 昭和41年(家)2896号 審判 1966年4月19日
国籍 中華民国 住所 東京都
申立人 朴斗正(仮名) 外一名
国籍 並びに 住所 申立人に同じ
未成年者 朴善根(仮名)
主文
本件申立を却下する。
理由
本件申立の要旨は、「申立人朴斗正が住宅建築資金として株式会社日本相互銀行から金一三〇〇万円の融資を受け、これが担保として、未成年者朴善根と申立人朴令子との共有にかかる東京都大田区田園調布○丁目○○番○宅地一〇〇坪三勺および同所○○番○○宅地七九坪四合二勺に抵当権を設定するにつき、未成年者朴善根の特別代理人として住所東京都大田区女塚○丁目○番地○○山田由太郎を選任されたい」というにある。
当裁判所の取り調べによれば、申立人らおよび本件未成年者はいずれも中華民国の国籍を有する中国人で、ながらく日本に住所を有し来つている者であるところ、本件については、当裁判所が裁判管轄権を有することは明らかであり、且つ又法例第二〇条に則り中華民国法に準拠してその許否を決すべきものと考える。
ところで中華民国法によれば、本件の如き場合父と子との間に利益相反関係ありとして、我が民法第八二六条に定めるような特別代理人の選任を認める法規は存在しないし、そのような判例の存在を知ることもできない。このことは逆に、本件の如き場合にあつても、法定代理人たる父母は未成年者のために適法な代理行為をなし得るのであつて、敢て特別代理人の如きを要しないものと考えるのが相当である。
してみれば本件につき特別代理人選任の必要はなく、結局本件申立はその理由がないことに帰するから、これを却下することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 高野耕一)